甘辛度・濃淡度とは?酸度で変わる淡麗辛口・濃醇甘口の見分け方
「淡麗辛口」「濃醇甘口」という言葉はよく見かけますが、どの数字を見ればそう言えるのかははっきりしません。実は、ラベルの日本酒度と酸度の 2 つがあれば、甘辛度と濃淡度という指標を計算して、味のタイプを数字で決められます。この記事では、甘辛度・濃淡度の計算式と手計算の例、日本酒度×酸度の早見表、酸度 0.1 が日本酒度いくつ分に当たるか、4 つのタイプの特徴と数字の例、アミノ酸度の読み方、香りで分ける「4 タイプ分類」との違いまでを解説します。
日本酒度だけでは甘辛が決まらない理由
日本酒度は 15℃ の比重を表す数字で、糖分が多いとマイナス(甘口寄り)、少ないとプラス(辛口寄り)になります。ところが人の舌は、糖分の量だけで甘さを感じているわけではありません。同じ量の砂糖を入れたレモネードでも、レモン果汁を多くするとあまり甘く感じなくなるのと同じで、日本酒でも酸が多いと甘さが打ち消され、辛く感じます。
そこで考えられたのが、日本酒度と酸度の 2 つを組み合わせて味の感じ方を数字にする方法です。1974 年に佐藤信らが、たくさんの日本酒を実際に飲み比べた評価をもとに式を作りました。甘い・辛いを表すのが「甘辛度」、味の濃さ(濃醇か淡麗か)を表すのが「濃淡度」です。
甘辛度・濃淡度の計算式と手計算の例
- 甘辛度 = 193593 ÷(1443 + 日本酒度)− 1.16 × 酸度 − 132.57(プラスが甘口、マイナスが辛口)
- 濃淡度 = 94545 ÷(1443 + 日本酒度)+ 1.88 × 酸度 − 68.54(プラスが濃醇、マイナスが淡麗)
式に出てくる「1443 + 日本酒度」は、日本酒度から比重を求める式の一部です。つまりどちらの式も、比重(糖分の目安)と酸度を組み合わせています。甘辛度では酸度にマイナスが付いていて、酸が多いほど辛口に動きます。濃淡度では酸度にプラスが付いていて、酸が多いほど濃醇に動きます。
- 1
例:日本酒度 +3・酸度 1.4 の甘辛度
193593 ÷ 1446 = 133.88。ここから 1.16 × 1.4 = 1.62 と 132.57 を引いて、133.88 − 1.62 − 132.57 = −0.31。ほぼ中口で、わずかに辛口寄りです。
- 2
同じ酒の濃淡度
94545 ÷ 1446 = 65.38。ここに 1.88 × 1.4 = 2.63 を足して 68.54 を引くと、65.38 + 2.63 − 68.54 = −0.52。やや淡麗です。
- 3
タイプを決める
甘辛度が ±0.5 の内側なので中口、濃淡度は −0.5 を少し下回るので淡麗側。まとめると「淡麗寄りの中口」になります。
甘辛度・濃淡度は、ふつうの日本酒ならおおむね −3〜+3 の範囲に収まります。区切りに公式の決まりはありませんが、日本酒度・酸度から甘辛度 計算ツールでは ±0.5 までを「中口」「中間」、±1.5 までを「やや辛口」「やや甘口」、±2.5 までを「辛口」「甘口」、それより外を「大辛口」「大甘口」と呼んでいます。
日本酒度×酸度の甘辛度早見表
日本酒度と酸度の組み合わせごとに、甘辛度を計算した表です。マイナスが辛口、プラスが甘口です。同じ行を右に進む(酸度が上がる)ほど、甘辛度が下がって辛口に動いていくのがわかります。
| 日本酒度\酸度 | 1.0 | 1.2 | 1.4 | 1.6 | 1.8 | 2.0 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| −6 | +0.99 | +0.76 | +0.53 | +0.29 | +0.06 | −0.17 |
| −2 | +0.62 | +0.38 | +0.15 | −0.08 | −0.31 | −0.54 |
| 0 | +0.43 | +0.20 | −0.03 | −0.27 | −0.50 | −0.73 |
| +2 | +0.24 | +0.01 | −0.22 | −0.45 | −0.68 | −0.92 |
| +4 | +0.06 | −0.17 | −0.40 | −0.64 | −0.87 | −1.10 |
| +6 | −0.13 | −0.36 | −0.59 | −0.82 | −1.05 | −1.29 |
| +10 | −0.49 | −0.73 | −0.96 | −1.19 | −1.42 | −1.65 |
たとえば日本酒度 −2 はやや甘口の数字ですが、酸度 2.0 なら甘辛度は −0.54 で辛口側です。逆に日本酒度 +6 は辛口の数字ですが、酸度 1.0 なら甘辛度は −0.13 でほぼ中口になります。「日本酒度はマイナスなのに辛い」「プラスなのに甘い」という食い違いは、この表でほとんど説明がつきます。
酸度 0.1 は日本酒度いくつ分?
式を少し変形すると、酸度と日本酒度のどちらが味に効いているかを比べられます。日本酒度がふつうの範囲(−10〜+15)にあるとき、日本酒度が 1 上がると甘辛度は約 0.093 下がります。一方、酸度が 0.1 上がると甘辛度は 0.116 下がります。
| 変化 | 甘辛度への影響 | 濃淡度への影響 |
|---|---|---|
| 日本酒度が +1 | 約 −0.09(辛口へ) | 約 −0.05(淡麗へ) |
| 酸度が +0.1 | −0.12(辛口へ) | 約 +0.19(濃醇へ) |
| 酸度 0.1 は日本酒度でいうと | 約 1.25 分 | 約 4 分(向きは逆) |
甘辛度では、酸度 0.1 の違いが日本酒度 1.25 ぶんに相当します。酸度が 1.4 から 1.8 に上がるだけで、日本酒度にして 5 ほど辛口に動くということです。濃淡度ではさらに酸度の影響が大きく、酸度 0.1 で日本酒度 4 ぶん動きます。濃淡度はほとんど酸度で決まると言ってよく、「濃醇な酒=酸度が高い酒」と考えて大きく外れません。
| 酸度 | 甘辛度が 0(中口のまん中)になる日本酒度 | 甘辛度 −0.5(辛口の入口)になる日本酒度 |
|---|---|---|
| 1.0 | +4.6 | +10.1 |
| 1.2 | +2.1 | +7.5 |
| 1.4 | −0.4 | +5.0 |
| 1.6 | −2.9 | +2.5 |
| 1.8 | −5.3 | 0.0 |
| 2.0 | −7.8 | −2.5 |
酸度 1.0 の酒は日本酒度 +10 を超えないと辛口と感じにくく、酸度 1.8 の酒は日本酒度 0 でもう辛口の入口に立っています。「辛口の酒が飲みたい」ときは、日本酒度だけでなく酸度の高さも一緒に見て選ぶのがコツです。
淡麗辛口・淡麗甘口・濃醇辛口・濃醇甘口の特徴
横軸に甘辛度、縦軸に濃淡度をとると、日本酒の味は 4 つのタイプに分けられます。それぞれの特徴と、計算上その位置に入る数字の例です。
| タイプ | 数字の例(日本酒度/酸度) | 甘辛度/濃淡度 | 味の特徴 |
|---|---|---|---|
| 淡麗辛口 | +8/1.2 | −0.54/−1.13 | 軽くてすっきり、後味のキレがよい。冷やして食中酒に |
| 淡麗甘口 | −4/1.1 | +0.69/−0.77 | やさしい甘さで飲みやすい。日本酒が初めての人にも |
| 濃醇辛口 | −2/2.0 | −0.54/+0.83 | コクと酸がしっかり。燗にすると旨味が広がる |
| 濃醇甘口 | −20/1.7 | +1.50/+1.10 | とろりとした甘さと厚み。食後酒やチーズと |
- 淡麗辛口は、酸度が低めで日本酒度が高い酒。新潟などの「すっきりした辛口」として人気のタイプです。
- 淡麗甘口は、酸度も日本酒度も低めの酒。低アルコールの酒やフルーティーな吟醸酒に多く見られます。
- 濃醇辛口は、酸度が高い酒。日本酒度がマイナスでも酸が甘さを抑えるので、辛くて濃い味になります。山廃・生酛造りの純米酒に多いタイプです。
- 濃醇甘口は、日本酒度が大きくマイナスで酸度も高めの酒。貴醸酒や長く熟成させた古酒などがここに入ります。
日本酒度・酸度から甘辛度 計算ツールの「甘辛・濃淡マップ」では、好きな酒と気になる酒を最大 8 本まで入れて、同じマップ上に並べられます。いつも選ぶ酒がどの象限に集まっているかがわかると、次に選ぶ酒の見当がつけやすくなります。
アミノ酸度と香りのタイプも合わせて見る
裏ラベルに書かれることがあるもう 1 つの数字が「アミノ酸度」です。日本酒に含まれるアミノ酸の量を表し、旨味やコクの目安になります。甘辛度・濃淡度の式には入っていませんが、味の厚みを読むのに役立ちます。
| アミノ酸度 | 目安 | 多いタイプ |
|---|---|---|
| 1.0 未満 | 低め(すっきり・きれいな味) | 大吟醸・吟醸酒 |
| 1.0〜1.6 | ふつう | 純米酒・本醸造酒の多く |
| 1.7 以上 | 高め(旨味・コクが多い) | 山廃・生酛、熟成酒 |
甘辛度・濃淡度は「味」を表す指標で、香りは含まれていません。香りまで含めた分類としては、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)の「4 タイプ分類」がよく知られています。香りが高い「薫酒(くんしゅ)」、軽快でなめらかな「爽酒(そうしゅ)」、コクのある「醇酒(じゅんしゅ)」、熟成した「熟酒(じゅくしゅ)」の 4 つで、おおまかには大吟醸・吟醸が薫酒、淡麗な生酒や本醸造が爽酒、純米酒や生酛が醇酒、古酒が熟酒にあたります。甘辛度・濃淡度で味の位置を、4 タイプで香りの方向を見ると、ラベルからかなり正確に味を想像できます。
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よくある質問
- 甘辛度とは何ですか?
- 日本酒度と酸度から計算する、日本酒の甘い・辛いの感じ方を表す数字です。甘辛度 = 193593 ÷(1443 + 日本酒度)− 1.16 × 酸度 − 132.57 で求め、プラスが甘口、マイナスが辛口です。1974 年に佐藤信らが飲み比べの評価をもとに作りました。
- 濃淡度とは何ですか?
- 日本酒の味の濃さを表す数字で、濃淡度 = 94545 ÷(1443 + 日本酒度)+ 1.88 × 酸度 − 68.54 で計算します。プラスが濃醇、マイナスが淡麗です。酸度 0.1 で約 0.19 動くため、ほとんど酸度で決まります。
- 酸度が高い日本酒は辛口ですか?
- 辛く感じやすくなります。酸が甘さを打ち消すためで、甘辛度の式では酸度 0.1 の上昇が日本酒度 約 1.25 の上昇と同じだけ辛口に動きます。日本酒度 −2 でも酸度 2.0 なら甘辛度は −0.54 で辛口側です。同時に濃淡度も上がるので、濃醇辛口になりやすいのが特徴です。
- 淡麗辛口とはどんな日本酒ですか?
- 甘辛度がマイナス(辛口)で、濃淡度もマイナス(淡麗)の日本酒です。酸度が低めで日本酒度が高い酒がこのタイプになり、たとえば日本酒度 +8・酸度 1.2 なら甘辛度 −0.54・濃淡度 −1.13 です。軽くすっきりした味で、冷やして食事と合わせるのに向いています。
- 日本酒の酸度はどのくらいが普通ですか?
- 多くの日本酒は 1.0〜2.0 の範囲で、1.4〜1.6 前後がふつうです。1.1 未満は低めでやわらかく甘く感じやすく、1.7 以上は高めでキレとコクが出ます。山廃・生酛造りや貴醸酒では 2.0 を超えることもあります。
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