シャトルランと最大酸素摂取量(VO2max)|回数から計算する式と目安、ビープテスト・Yo-Yoテストとの違い
シャトルランの回数は、ただの「何回走れたか」ではなく、全身持久力の代表的な指標である最大酸素摂取量(VO2max)を推定する手がかりにもなります。この記事では、最大酸素摂取量とは何か、シャトルランの回数から計算する Léger の式と回数別の早見表、年代別の目安や健康づくりの基準との比べ方、海外の「ビープテスト(Beep test)」やサッカーなどで使われる「Yo-Yo テスト」との違いまでを解説します。
最大酸素摂取量(VO2max)とは
最大酸素摂取量(VO2max)は、全力に近い運動をしているときに、体が 1 分間に取り込んで使える酸素の最大量です。体重 1kg あたりの量(ml/kg/分)で表すのがふつうで、数字が大きいほど、心臓・肺・血液・筋肉が酸素をたくさん運んで使えること、つまり全身持久力が高いことを意味します。
正確に測るには、ランニングマシンや自転車で少しずつ運動をきつくしながら、マスクで吐く息を分析する専用の検査が必要です。シャトルランは、そうした機械を使わずに大勢を一度に測れるよう考えられたテストで、最後に走れた速さが最大酸素摂取量とよく対応することが確かめられています。
- 単位は ml/kg/分:体重 60kg の人が 1 分間に 3,000ml の酸素を使えるなら 50ml/kg/分です。
- 一般的な目安:運動習慣のない成人で 30〜40 台、よくトレーニングしている人で 50〜60 台、マラソンやクロスカントリースキーの一流選手では 70〜80 台に達することもあります。
- 年齢とともに下がる:トレーニングをしていないと、成人以降は少しずつ低下します。運動を続けることで下がり方をゆるやかにできます。
シャトルランの回数から計算する Léger の式
シャトルランを考案したレジェ(Léger)らは、最後に走っていたレベルの時速から最大酸素摂取量を推定する式を発表しています。18 歳以下では年齢によって同じ速さでも値が変わるため、年齢を入れた式を使います。
- 1
記録の回数からレベルを出す
たとえば 80 回は、レベル 9(73〜83 回)に入ります。
- 2
レベルの時速を出す
8.5 + 0.5 ×(9 − 1)= 12.5km です。
- 3
式に入れる
大人なら −24.4 + 6.0 × 12.5 = 50.6ml/kg/分。14 歳なら 31.025 + 3.238 × 12.5 − 3.248 × 14 + 0.1536 × 14 × 12.5 ≒ 52.9ml/kg/分です。
各レベルが何回目から何回目かはシャトルランのレベル表で確認できます。20mシャトルラン 音源・練習タイマーでは、回数と年齢を入れるだけでこの式による推定値を表示します。
回数別の最大酸素摂取量の早見表
上の式で、回数ごとの推定値を計算しました(単位は ml/kg/分)。同じ回数でも、子どもは年齢が低いほど高い値になります。これは、体が小さい子どもは同じ速さで走るのにより多くの酸素を使う(走る効率が低い)ためです。
| 回数 | レベル(時速) | 10 歳 | 14 歳 | 17 歳 | 大人(19 歳以上) |
|---|---|---|---|---|---|
| 20 回 | 3(9.5km) | 43.9 | 36.7 | 31.4 | 32.6 |
| 30 回 | 4(10.0km) | 46.3 | 39.4 | 34.3 | 35.6 |
| 40 回 | 5(10.5km) | 48.7 | 42.1 | 37.2 | 38.6 |
| 50 回 | 6(11.0km) | 51.1 | 44.8 | 40.2 | 41.6 |
| 60 回 | 7(11.5km) | 53.4 | 47.5 | 43.1 | 44.6 |
| 70 回 | 8(12.0km) | 55.8 | 50.2 | 46.0 | 47.6 |
| 80 回 | 9(12.5km) | 58.2 | 52.9 | 48.9 | 50.6 |
| 90 回 | 10(13.0km) | 60.6 | 55.6 | 51.8 | 53.6 |
| 100 回 | 11(13.5km) | 63.0 | 58.3 | 54.8 | 56.6 |
| 110 回 | 12(14.0km) | 65.4 | 61.0 | 57.7 | 59.6 |
| 125 回 | 13(14.5km) | 67.8 | 63.7 | 60.6 | 62.6 |
| 150 回 | 15(15.5km) | 72.5 | 69.1 | 66.5 | 68.6 |
推定値は、ターンの上手さ、走り方の効率、その日の体調や、最後まで粘れたかどうかでも変わります。実際に測った値と比べると、人によっては数 ml/kg/分ほどずれることもあるので、「自分の持久力のおおよその位置」や「練習前後の変化」を見る目安として使ってください。
健康づくりの基準と比べてみる
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準 2013」では、生活習慣病などのリスクを下げるために望ましい全身持久力の基準として、性・年代別の最大酸素摂取量が示されています。これを大人の推定式で逆算すると、シャトルランのおおよその目安になります。
| 年代 | 男性の基準 | シャトルランの目安 | 女性の基準 | シャトルランの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 18〜39 歳 | 39ml/kg/分 | レベル 6(42 回〜) | 33ml/kg/分 | レベル 4(24 回〜) |
| 40〜59 歳 | 35ml/kg/分 | レベル 4(24 回〜) | 30ml/kg/分 | レベル 3(16 回〜) |
| 60〜69 歳 | 32ml/kg/分 | レベル 3(16 回〜) | 26ml/kg/分 | レベル 1(1 回〜) |
たとえば 30 代の男性なら、シャトルランでレベル 6(42 回)以上を走れれば、基準を満たしている目安になります。ただし、ふだん運動をしていない大人や持病のある人が、いきなり限界まで走るのは危険です。まずは目標の回数で止める練習から始め、体調に不安があるときは医師に相談してください。大人の得点表はシャトルランの得点表と平均回数に載せています。
ビープテスト・Yo-Yo テストとの違い
海外の記事や動画で見る「Beep test」「Bleep test」「Multi-stage fitness test(MSFT)」「PACER」は、どれも日本の 20m シャトルランと同じ系統のテストです。ただし、国や団体によって速さの上げ方や記録の書き方が少しずつ違います。
| テスト | 主な使われ方 | 日本のシャトルランとの違い |
|---|---|---|
| 20m シャトルラン(新体力テスト) | 日本の学校・体力テスト | 時速 8.5km から 0.5km ずつ、レベル 21・247 回まで。記録は通算の回数 |
| Beep test / Bleep test / MSFT | イギリス・オーストラリアなどの学校、警察・消防・軍の採用試験 | 記録を「レベル 9 の 8 回目」のように「9.8」と書くことが多い。開始速度や刻みが違う版もある |
| PACER | アメリカの学校(FitnessGram) | 20m 版と 15m 版がある。記録は回数で書く |
| Yo-Yo テスト(Intermittent Recovery) | サッカー・バスケットなど球技のチーム | 20m を往復するたびに 10 秒の休み(軽いジョグ)が入り、くり返しダッシュする力を測る |
Yo-Yo テストは、休みを挟みながら速さを上げていく「間欠的」なテストで、試合中にダッシュと回復をくり返す球技の体力を測るのに向いています。休みがないシャトルランとは測っている力が少し違うので、記録をそのまま比べることはできません。海外のビープテストの結果を日本の回数と比べるときは、どのバージョンかを確認し、レベルと時速で比べるのが確実です。
よくある質問
- シャトルランの回数から最大酸素摂取量は計算できますか?
- 推定ならできます。最後に走っていたレベルの時速を使い、19 歳以上は −24.4 + 6.0 × 時速、6〜18 歳は年齢も入れた Léger の式で計算します。大人が 80 回(レベル 9・時速 12.5km)なら約 50.6ml/kg/分です。
- 最大酸素摂取量の平均はどれくらいですか?
- 年齢・性別や運動習慣で大きく変わりますが、運動習慣のない成人ではおおむね 30〜40 台の ml/kg/分です。厚生労働省の基準では、18〜39 歳の男性で 39、女性で 33ml/kg/分以上が望ましいとされています。
- ビープテストとシャトルランは同じですか?
- 同じ系統のテストです。海外の Beep test(Bleep test、MSFT)も 20m を電子音に合わせて往復しますが、開始速度やレベルの刻み、記録の書き方(「9.8」のようにレベルと回数で書く)が版によって違うことがあります。
- Yo-Yoテストとシャトルランの違いは何ですか?
- Yo-Yo テスト(Intermittent Recovery)は、20m を往復するたびに 10 秒の休みが入る間欠的なテストで、ダッシュと回復をくり返す球技の体力を測ります。休みのないシャトルランとは測る力が少し違うので、記録は直接比べられません。
- 子どもの最大酸素摂取量が大人より高く出るのはなぜですか?
- 子どもは体が小さく走る効率が低いため、同じ速さで走るのにより多くの酸素を使います。そのため Léger の 6〜18 歳の式では、同じ回数でも年齢が低いほど推定値が高くなります。
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