夏・冬の仕込み水の作り方|氷は何g?お湯は何g?捏ね上げ温度を合わせる計算と対策
夏は生地がすぐ30℃を超えてベタつき、冬はいつまでたってもふくらまない。季節でパンの出来がぶれる原因の多くは、捏ね上げ温度が合っていないことです。計算式で仕込み水の温度を出したら、次はその温度の水を実際に作る番です。この記事では、夏に仕込み水へ入れる氷の量、冬に混ぜるお湯の量を計算する式と早見表、水だけでは温度を合わせきれないとき(0℃未満・40℃超)の対策、イーストが弱る温度の注意点までをまとめます。
夏と冬に捏ね上げ温度がずれる理由
捏ね上げ温度は、室温・粉の温度・仕込み水の温度の平均に、こねている間の上昇温度を足したものとして考えます。夏は室温も粉も30℃近くまで上がり、冬は15℃を下回ることもあります。水道水の温度も、夏は25℃前後、冬は10℃前後と大きく変わります。同じレシピを同じ手順で作っても、季節によって捏ね上げ温度が5℃以上ずれるのは珍しくありません。
仕込み水の温度=(目標の捏ね上げ温度−上昇温度)×3−(室温+粉温)の式で、食パン(目標27℃)を手ごね(上昇3℃)する場合を比べると、ずれの大きさがよくわかります。
| 季節 | 室温 | 粉の温度 | 必要な仕込み水の温度 | 水道水との差 |
|---|---|---|---|---|
| 夏 | 30℃ | 28℃ | 14℃ | 水道水(約25℃)より11℃ほど冷たい |
| 春・秋 | 24℃ | 22℃ | 26℃ | 水道水とほぼ同じ |
| 冬 | 15℃ | 13℃ | 44℃ | 水道水(約10℃)より30℃以上温かい |
夏は水道水を冷やし、冬はお湯で温める必要があることがわかります。「冷蔵庫の水を使う」「ぬるま湯を使う」とレシピに書かれていても、何℃にすればいいかは室温次第です。計算で必要な水温を出してから、氷やお湯を何g使うかを決めると、毎回同じ温度に合わせられます。仕込み水の温度の式そのものは捏ね上げ温度の計算式でくわしく解説しています。
夏の仕込み水に入れる氷の量の計算式
冷蔵庫で冷やした水でも足りないときは、仕込み水の一部を氷に置きかえます。ポイントは、氷は溶けるときに周りから熱を奪うということです。0℃の氷1gが0℃の水になるには約80calの熱が必要で、この「融解熱」のおかげで、氷は同じ重さの0℃の水よりずっと強く水を冷やします。
たとえば仕込み水が180g、水道水が26℃、目標の水温が8℃なら、180×(26−8)÷(26+80)=180×18÷106≒31gです。氷31gと水道水149gを合わせて180gにし、氷が溶けきれば約8℃の水になります。仕込み水の量ごとの氷の量を早見表にまとめました。
| 仕込み水の量 | 水道水の温度 | 目標の水温 | 氷の量 | 水道水の量 |
|---|---|---|---|---|
| 180g | 26℃ | 14℃ | 約20g | 約160g |
| 180g | 26℃ | 8℃ | 約31g | 約149g |
| 200g | 28℃ | 14℃ | 約26g | 約174g |
| 200g | 28℃ | 10℃ | 約33g | 約167g |
| 200g | 28℃ | 5℃ | 約43g | 約157g |
| 250g | 25℃ | 10℃ | 約36g | 約214g |
| 300g | 28℃ | 5℃ | 約64g | 約236g |
思ったより少ない量で足りると感じるかもしれません。仕込み水200gを28℃から5℃まで下げるのに必要な氷は約43gで、全体の2割ほどです。冷凍庫の氷は実際には0℃より低い(−18℃前後)ので、その分さらに冷やす力があり、計算より少し少なめでも目標に届きます。
氷水を使うときの手順と注意点
- 1
計量カップをはかりにのせて0にする
仕込み水は体積ではなく重さで量ります。氷も水も同じ容器にまとめて量れば、合計を仕込み水の量に合わせやすくなります。
- 2
計算した量の氷を入れる
氷の大きさはそろっていなくてかまいません。重さで計算どおりの量を入れます。
- 3
水道水を足して、仕込み水の量ちょうどにする
氷の分を引いた量の水道水を入れ、合計がレシピの水の量になるようにします。
- 4
よくかき混ぜて氷を溶かしきる
氷のかけらが残ったまま粉に入れると、溶けるまでに時間がかかり、生地の中で温度ムラができます。溶けきってから温度計で水温を確かめて使います。
- 氷を溶かす間に水が少し温まるので、数分以内に使う
- 生地に入れるのは溶けた水だけなので、氷を入れたまま量り直す必要はない
- ホームベーカリーは、パンケースに入れた冷水が本体の熱で温まりやすい。材料を入れたらすぐにスタートする
- 夏は塩・砂糖・スキムミルクなどの材料も冷蔵庫で冷やしておくと、さらに温度を下げやすい
水温が0℃を下回るとき|水以外で温度を下げる方法
真夏に低い捏ね上げ温度を狙う生地では、計算した水温がマイナスになることがあります。たとえばバゲット(目標24℃)を室温30℃・粉温28℃でニーダーを使って(上昇6℃)こねると、(24−6)×3−(30+28)=−4℃です。0℃より冷たい水は作れないので、全部を氷水にしても捏ね上げ温度は目標より上がってしまいます。この場合は、水以外の温度を下げる方法を組み合わせます。
| 方法 | やり方 | 効き方の例(バゲット・目標24℃) |
|---|---|---|
| 粉を冷やす | 前日から、または1〜2時間前に粉を冷蔵庫に入れる | 室温30℃・粉温18℃・手ごねなら、水温は15℃で済む |
| 室温を下げる | エアコンで作業する部屋を冷やす | さらに室温26℃にすると、水温は19℃でよくなる |
| こね時間を短くする | 途中で生地を休ませる・オートリーズを取り入れる | 上昇温度そのものを小さくできる |
| 道具を冷やす | ボウルの下に保冷剤を当てる、大理石の台を使う | こねている間の温度上昇を抑える |
いちばん効くのは粉を冷やすことです。粉は生地の中でいちばん量が多い材料なので、粉温を10℃下げると、仕込み水の温度は10℃高くても同じ捏ね上げ温度になります。夏場は使う分の粉を密閉袋に入れて冷蔵庫に保存しておくと、毎回の準備が楽になります。冷蔵庫から出した粉は結露しやすいので、袋に入れたまま計量直前まで出さないようにしましょう。
冬の仕込み水に混ぜるお湯の量
冬は反対に、水道水を温めて仕込み水を作ります。電子レンジで温めると温度がばらつきやすいので、沸騰したお湯と水道水を混ぜて作るのが簡単で確実です。
| 仕込み水の量 | 水道水の温度 | 目標の水温 | 沸騰したお湯 | 水道水 |
|---|---|---|---|---|
| 170g | 15℃ | 35℃ | 約40g | 約130g |
| 170g | 12℃ | 38℃ | 約50g | 約120g |
| 170g | 10℃ | 44℃ | 約64g | 約106g |
| 200g | 10℃ | 35℃ | 約56g | 約144g |
| 200g | 12℃ | 40℃ | 約64g | 約136g |
| 200g | 10℃ | 44℃ | 約76g | 約124g |
ケトルで沸かしたお湯は、注いでいる間にも少しずつ冷めます。計算どおりに混ぜたら、最後に温度計で確かめ、高すぎれば水道水を少し、低すぎればお湯を少し足して合わせます。足した分だけ合計の重さが変わるので、仕込み水の量は最後にもう一度量り直しましょう。
40℃・50℃を超えるときの注意|イーストが弱る温度
冬に部屋がとても寒いと、計算した水温が40℃を超えることがあります。食パン(目標27℃)を手ごねする場合、室温15℃・粉温13℃で44℃、室温12℃・粉温10℃で50℃、室温10℃・粉温8℃では54℃です。イーストは40℃を超えるお湯に直接触れると弱りはじめ、50〜60℃では死んでしまうといわれます。
| 計算した水温 | ツールの表示 | 対処 |
|---|---|---|
| 40℃まで | その温度の水で仕込む | そのまま使ってよい |
| 40〜50℃ | イーストに直接当てない(注意) | 先に粉とお湯を混ぜてから、イーストを加える |
| 50℃を超える | 熱すぎます | 水以外の温度を上げる方法を組み合わせる |
- 粉を暖かい部屋に置いて、粉温を上げておく(室温15℃・粉温20℃なら、水温は37℃で済む)
- 作業する部屋を暖房で暖める(室温20℃・粉温20℃なら32℃)
- オーブンの発酵機能の近くや、ぬるま湯を張ったシンクの近くで作業する
- ボウルを湯せんにかけながらこねる
- ドライイースト(予備発酵が必要なもの)を使うときは、予備発酵用のぬるま湯を35〜40℃に保つ
パン作り 計算で氷・お湯の量を出す
パン作り 計算の「仕込み水の温度」タブで、生地の種類・室温・粉温・こね方を入れて仕込み水の温度を出したら、下の「氷・お湯の量」に仕込み水の量と水道水の温度を入れてください。水道水より冷たい水が必要なときは氷の量、温かい水が必要なときは沸騰したお湯の量を、それぞれ水道水の量と合わせて表示します。0℃を下回るとき・40℃や50℃を超えるときは、注意とあわせて対策が表示されます。
仕込み水の量はレシピの水の量そのものです。粉の量や仕上がりの生地量から水の量を出したいときは、同じツールの「ベーカーズ% 配合表」で配合をgに直してから使うと便利です。くわしくはベーカーズパーセントの計算方法を参考にしてください。
よくある質問
- 仕込み水に氷を何g入れればよいですか?
- 氷の量=仕込み水の量×(水道水の温度−目標の水温)÷(水道水の温度+80)がめやすです。仕込み水180g・水道水26℃・目標8℃なら、180×18÷106≒31gの氷と149gの水道水を合わせます。
- 夏にパン生地の温度が上がりすぎるときはどうすればいいですか?
- まず計算した温度の冷水(必要なら氷水)で仕込みます。水温が0℃を下回る計算になるときは、粉を冷蔵庫で1〜2時間冷やす、エアコンで室温を下げる、こね時間を短くする、ボウルに保冷剤を当てる、などを組み合わせます。粉を冷やすのがいちばん効果的です。
- 冬にパンが発酵しないのは温度のせいですか?
- 多くの場合、捏ね上げ温度が低いことが原因です。室温15℃・粉温13℃で食パンを手ごねするなら、仕込み水は約44℃が必要です。水道水(10℃)のままだと捏ね上げ温度は(15+13+10)÷3+3≒16℃まで下がり、目標の27℃より11℃も低くなるため、発酵がなかなか進みません。
- 仕込み水のぬるま湯はどうやって作りますか?
- 沸騰したお湯と水道水を混ぜて作ります。お湯の量=仕込み水の量×(目標の水温−水道水の温度)÷(100−水道水の温度)です。200gを12℃の水道水から40℃にするなら、お湯約64gと水道水約136gです。最後に温度計で確かめます。
- イーストは何度で死にますか?
- 40℃を超えるお湯に直接触れると弱りはじめ、50〜60℃で死んでしまうといわれます。仕込み水が40〜50℃になるときは、先に粉とお湯を混ぜてからイーストを加え、50℃を超えるときは粉や部屋を温めて水温を下げられるようにします。
この記事で紹介したツール
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