使い方ガイド公開日 読了目安 約10分

スプロケットの選び方|11-30と11-34の違い・ヒルクライムに要る歯数・チェーン長

ロードバイクのカスタムで、いちばん手軽で効果が大きいのがスプロケット(カセット)の交換です。「11-30 と 11-34 はどっちがいい?」「峠を登るには何 T 必要?」「交換したらチェーンは何コマ?」——この記事では、スプロケットの表記の読み方、主なスプロケットの歯の並びと段差、クロスレシオとワイドレシオの違い、勾配と出力ごとに計算した登坂速度とケイデンスの目安、交換前に確認したいリアディレイラーのキャパシティ、チェーンのコマ数の決め方までをまとめます。

「12速 11-34」の読み方

スプロケットの表記は「段数」と「一番小さいギア−一番大きいギア」の歯数です。12 速 11-34 なら、11T から 34T までの 12 枚のギアが重なっています。一番小さいギア(11T)がトップで最も重く、一番大きいギア(34T)がローで最も軽いギアです。

  • 段数:ディレイラーやシフターと同じ段数のものを選ぶ(11 速の車体に 12 速は付かない)
  • トップ(最小歯数):小さいほど高速域に強い。11T が一般的で、10T から始まるものは対応するフリーボディが必要
  • ロー(最大歯数):大きいほど登りが楽。28〜34T が主流で、グラベル用は 36T 以上もある
  • 間の並び:同じ 11-34 でも段数やメーカーで中間の歯数が違う。並びで使い勝手が変わる

主なスプロケットの歯の並びと段差

隣のギアに変速したときにどれだけ重さが変わるか(段差)は、歯数の比で決まります。11T→12T は 9.1%、17T→19T は 11.8%、30T→34T は 13.3% です。段差が 10% を超えると、ケイデンス 90rpm で走っていて 1 段変えたとき 81rpm 前後まで落ちる計算になり、変速のたびに脚のリズムが変わるのを感じやすくなります。

スプロケット歯の並び段差の最大
11速 11-2511-12-13-14-15-16-17-19-21-23-2511.8%
11速 11-2811-12-13-14-15-17-19-21-23-25-2813.3%
11速 11-3211-12-13-14-16-18-20-22-25-28-3214.3%
11速 11-3411-13-15-17-19-21-23-25-27-30-3418.2%
12速 11-3011-12-13-14-15-16-17-19-21-24-27-3014.3%
12速 11-3411-12-13-14-15-17-19-21-24-27-30-3414.3%
12速 10-3310-11-12-13-14-15-17-19-21-24-28-3317.9%
12速 10-3610-11-12-13-15-17-19-21-24-28-32-3616.7%

11 速の 11-34 は、11-13-15 と小さいギアから 2T 飛ばしになっていて、平地で使うトップ側の段差が 15〜18% と大きくなります。12 速の 11-34 は 11〜15T が 1T 刻みなので、ワイドなのにトップ側は細かく刻めるのが利点です。同じ「11-34」でも、11 速と 12 速では使い心地がかなり違います。

クロスレシオとワイドレシオの違い

最大と最小の差が小さく、隣のギアとの段差が小さいスプロケットをクロスレシオ、差が大きく軽いギアまで用意したものをワイドレシオと呼びます。どちらが優れているわけではなく、走る場所で向き不向きがあります。

クロスレシオ(11-25・12-25 など)ワイドレシオ(11-32・11-34 など)
段差6〜10% と小さい12〜18% と大きめ
向いている場所平地・集団走行・レース峠・アップダウン・ロングライド
利点ペースを細かく合わせられる急坂でも回せるギアがある
気になる点坂で軽いギアが足りない変速のたびにケイデンスが変わる
50-34 との一番軽いギア34×25(1.36)34×34(1.00)

12-25 のようなクロスレシオは、12T から 19T まで 1T 刻みで並び、段差が 6% 前後しかありません。平地で 30km/h 前後をきっちり維持したい人には気持ちのいい構成ですが、50-34 と組んでも一番軽いギアが 1.36 なので、勾配 8% を超える坂では苦しくなります。

11-30 と 11-34 の違いは「一番軽いギアが約 12% 軽い」

12 速の 11-30 と 11-34 は、11〜15T の 5 枚が共通で、違うのは 16T 以降です。11-30 は 16T を入れて中間を細かくし、11-34 は 16T を抜いて 34T を足しています。

  • 一番軽いギア:34×30 は 1.13、34×34 は 1.00。11-34 のほうが約 12% 軽い(34×30 は 34×34 より約 13% 重い)
  • 10km/h で登るときのケイデンス(700×28C):11-30 は約 69rpm、11-34 は約 78rpm
  • 平地のギア:15T→17T の段差が、11-30 は 6.7%+6.3%(16T を経由)、11-34 は 13.3% と大きい
  • ギアレンジ(50-34 と組んだとき):11-30 は 401%、11-34 は 455%

平地中心で 30km/h 前後を細かく調整したいなら 11-30、峠や激坂のあるコースを走るなら 11-34 が向いています。「34T は使わないかもしれないけど、あると安心」という保険の意味で 11-34 を選ぶ人も多く、ロングライドの後半で脚が残っていないときにも助けになります。

ヒルクライムに要る歯数——勾配・出力別のケイデンス

坂で必要な軽さは、勾配と自分が出し続けられる出力で決まります。体重と車体の合計を 78kg、タイヤを 700×28C として、勾配ごとの登坂速度と、そのとき前 34T で回したときのケイデンスを計算しました。転がり抵抗と空気抵抗を含めた目安で、風や路面で前後します。

勾配出力登坂速度34×2834×3034×34
6%150W約 10.3km/h66rpm71rpm81rpm
6%200W約 13.4km/h86rpm92rpm105rpm
8%150W約 8.0km/h52rpm55rpm63rpm
8%200W約 10.6km/h68rpm73rpm83rpm
10%150W約 6.5km/h42rpm45rpm51rpm
10%200W約 8.7km/h56rpm60rpm68rpm
12%200W約 7.3km/h47rpm51rpm57rpm

150W は、ロードバイクに慣れてきた人が 30 分〜1 時間登り続けられる出力の目安です。この出力だと、勾配 6% では 34×30 で 71rpm 回せますが、8% になると 34×34 でも 63rpm まで落ちます。勾配 8〜10% の区間が続く峠に行くなら、11-34 でもまだ重く、前を 46-30 や 48-32 にする選択肢も出てきます。

  • 勾配 5% 前後までの坂が多い:11-28〜11-30 で足りることが多い
  • 勾配 6〜8% の峠を登る:11-32〜11-34 があると 70rpm 前後を保ちやすい
  • 勾配 10% 以上の激坂がある:11-34 でも足りない人は、前を 46-30・48-32 にするか、10-36 などのワイドなスプロケットを検討

勾配の % と角度の関係は勾配の%と角度の換算|10%は何度?で解説しています。地図アプリに出る勾配と、体感で「きつい」と感じる角度を結びつけておくと、ギアの準備がしやすくなります。

交換前に確認:リアディレイラーの最大歯数とキャパシティ

スプロケットを大きくするとき、まず確認するのがリアディレイラーの対応範囲です。説明書や仕様表には「最大ローギア(ロー側の最大歯数)」と「トータルキャパシティ」が書かれています。どちらかを超えると、変速しなかったり、チェーンがたるんだり、最悪の場合ディレイラーがスポークに巻き込まれたりします。

  1. 1

    最大ローギアを確認する

    取り付けたいスプロケットの最大歯数(34T など)が、リアディレイラーの最大ローギア以下かを確かめます。

  2. 2

    トータルキャパシティを計算する

    (前の最大 − 前の最小)+(後ろの最大 − 後ろの最小)です。50-34 × 11-34 なら(50 − 34)+(34 − 11)= 39T です。

  3. 3

    仕様表の値と比べる

    計算した値が、リアディレイラーのトータルキャパシティ以下なら使えます。ショートケージとロングケージで値が違うので、型番の末尾まで確認します。

構成(前 50-34)トータルキャパシティ
× 11-2530T
× 11-2833T
× 11-3035T
× 11-3237T
× 11-3439T
× 10-3642T

スプロケット交換後のチェーンのコマ数

ローギアを大きくすると、チェーンも長くする必要があります。変速付きの自転車でよく使われる計算式は、「2 × チェーンステー長(インチ)+ 前の最大歯数 ÷ 4 + 後ろの最大歯数 ÷ 4 + 1」をインチ単位で切り上げ、2 倍してコマ数にする方法です(1 インチ = 2 コマ)。

チェーンステー長50 × 28T50 × 30T50 × 32T50 × 34T50 × 36T
405mm106 コマ106 コマ108 コマ108 コマ110 コマ
410mm106 コマ108 コマ108 コマ110 コマ110 コマ
415mm108 コマ108 コマ110 コマ110 コマ112 コマ

後ろの最大歯数が 1T 増えると、チェーンはおよそ半コマ長く必要になります。11-30 から 11-34 に替えるとローが 4T 増えるので、チェーンステーによっては 2 コマ足す必要が出てきます。実車では、アウター×ローにディレイラーを通さずにチェーンを巻き、ちょうどつながる長さを偶数に切り上げて 2 コマ足す方法でも確かめられます。

よくある質問

11-30 と 11-34 はどっちがいいですか?
平地中心なら中間のギアが細かい 11-30、峠や激坂を走るなら 11-34 がおすすめです。50-34 と組むと、一番軽いギアは 34×30 が 1.13、34×34 が 1.00 で、11-34 のほうが約 12% 軽くなります。
ヒルクライムには何 T のスプロケットが必要ですか?
体重と車体で 78kg、出力 150W の場合、勾配 6% なら 34×30 で約 71rpm、勾配 8% なら 34×34 でも約 63rpm です。勾配 6〜8% の峠なら 11-32〜11-34、10% 以上の激坂があるなら前のギアを小さくすることも検討してください。
スプロケットを 11-34 に替えたらチェーンは何コマですか?
チェーンステー 410mm・前 50T なら、計算式で 110 コマです。ローが 1T 増えるとチェーンは約半コマ長く必要になり、11-30(108 コマ)から 11-34 に替えると 2 コマ増える計算になります。
トータルキャパシティの計算方法は?
(前の最大歯数 − 前の最小歯数)+(後ろの最大歯数 − 後ろの最小歯数)です。50-34 × 11-34 なら 16 + 23 = 39T になります。リアディレイラーの仕様のトータルキャパシティ以下であることを確認してください。
クロスレシオとワイドレシオの違いは何ですか?
クロスレシオは隣のギアとの段差が 6〜10% と小さく、平地でペースを細かく合わせやすいスプロケットです。ワイドレシオは段差が 12〜18% と大きい代わりに、一番軽いギアが軽く、坂を登りやすくなります。

この記事で紹介したツール

あわせて読みたい

使い方ガイド約9分

ピストのギア比の選び方|48×17が定番の理由とスキッドパッチ早見表

ピスト(固定ギア)やシングルスピードはギアが 1 つしかないので、ギア比の選び方がそのまま乗りやすさを決めます。軽すぎると平地で脚が回りきってしまい、重すぎると出だしと坂がつらくなります。さらに固定ギアでは、スキッドしたときにタイヤのすり減る場所の数「スキッドパッチ」も気にする必要があります。この記事では、定番の 48×17 がなぜ選ばれるのか、用途別のギア比と速度、スキッドパッチの仕組みと計算方法、44〜52T × 14〜18T の早見表、ギアを替えたときのチェーンのコマ数、公道を走るときの注意までをまとめます。

記事を読む →
使い方ガイド約9分

サイコンのタイヤ周長の設定値|700×25C・28Cの周長一覧と実測のやり方

サイクルコンピューター(サイコン)やスピードセンサーを付けると、最初に聞かれるのが「タイヤ周長(mm)」です。ここがずれていると、速度も走行距離も同じ割合で狂い続けます。この記事では、タイヤ周長が速度表示にどう効くのか、タイヤ側面の ETRTO(28-622 のような数字)の読み方と周長の計算式、700×23C〜45C・650B・26インチ・20インチ・ママチャリの周長一覧、メーカーの表と数 mm 違う理由、いちばん正確な実測(ロールアウト)の手順、ずれたときの誤差の大きさまでを、具体的な数字でまとめます。

記事を読む →
使い方ガイド約7分

インチをcmに換算|テレビ・自転車・ズボンのサイズの読み方

テレビは「55型」、自転車は「26インチ」、ズボンは「W30」。同じインチという単位でも、測っている場所が違うため、そのままcmに直しても知りたい寸法にならないことがあります。この記事では、1インチ=2.54cmの換算と暗算のコツ、製品ごとにインチが何を指しているのか、尺・寸との関係までまとめます。

記事を読む →