箏(琴)の平調子の調弦|13本の音名と柱(じ)の合わせ方
箏(こと)の稽古で最初に覚える調弦が「平調子(ひらぢょうし)」です。13本もの絃を1本ずつ合わせるのは大変そうに見えますが、どの絃とどの絃が同じ音・オクターブの関係にあるかを知っていれば、手順はぐっとシンプルになります。この記事では、絃の名前と平調子の音名・周波数、一の絃の高さを変えたときの早見表、柱の動かし方と調弦の手順、オクターブの関係を使った確かめ方、平調子の音階としての特徴、ほかの調子との関係までをまとめます。
箏の13本の絃の名前と、柱・龍角
箏の絃は、奏者から遠い側(いちばん低い絃)から順に、一・二・三・四・五・六・七・八・九・十・斗(と)・為(い)・巾(きん)と呼びます。十一本目からは数字ではなく、斗・為・巾という漢字1文字の名前になるのが特徴です。
- 柱(じ):絃の下に立てる可動式の駒。柱を動かして絃の振動する長さを変え、音の高さを合わせる
- 龍角(りゅうかく):右手で弾く側の端にある固定の駒。絃はこの龍角と柱の間で振動する
- 柱を龍角に近づける:振動する部分が短くなり、音が高くなる
- 柱を龍角から遠ざける:振動する部分が長くなり、音が低くなる
三味線や三線が糸巻きで張りを変えて合わせるのに対し、箏は基本的に絃の張りはそのままで、柱の位置で音の高さを合わせます。絃の張りそのものを変える(締め直す)のは、絃が伸びて柱をどこに置いても合わなくなったときです。
平調子の音名と周波数(一=D の場合)
一の絃を D(レ)にした平調子の音は次のとおりです。周波数は基準 A4=440Hz の平均律で、一の絃を D4(約294Hz)とした場合の値です。
| 絃 | 音名 | ドレミ | 周波数 | ほかの絃との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 一 | D4 | レ | 293.7Hz | 五と同じ高さ |
| 二 | G3 | ソ | 196.0Hz | 七の1オクターブ下 |
| 三 | A3 | ラ | 220.0Hz | 八の1オクターブ下 |
| 四 | B♭3 | シ♭ | 233.1Hz | 九の1オクターブ下 |
| 五 | D4 | レ | 293.7Hz | 一と同じ・十の1オクターブ下 |
| 六 | E♭4 | ミ♭ | 311.1Hz | 斗の1オクターブ下 |
| 七 | G4 | ソ | 392.0Hz | 為の1オクターブ下 |
| 八 | A4 | ラ | 440.0Hz | 巾の1オクターブ下 |
| 九 | B♭4 | シ♭ | 466.2Hz | 四の1オクターブ上 |
| 十 | D5 | レ | 587.3Hz | 五の1オクターブ上 |
| 斗 | E♭5 | ミ♭ | 622.3Hz | 六の1オクターブ上 |
| 為 | G5 | ソ | 784.0Hz | 七の1オクターブ上 |
| 巾 | A5 | ラ | 880.0Hz | 八の1オクターブ上 |
一の絃だけは例外で、二の絃より高く、五の絃と同じ音になります。二から巾までは低い順に並び、使われている音は D・E♭・G・A・B♭ の5つだけです。13本といっても、実際に覚える音名は5種類と考えると気が楽になります。
一の絃の高さを変えたときの早見表
平調子は一の絃の高さを変えると、全体が同じ幅だけ平行に動きます。曲や合奏相手、歌い手の声によって一の絃を D 以外にすることもあるので、よく使われる高さで並べました。
| 絃 | 一=C | 一=D | 一=E | 一=F | 一=G |
|---|---|---|---|---|---|
| 一・五 | C | D | E | F | G |
| 二・七・為 | F | G | A | B♭ | C |
| 三・八・巾 | G | A | B | C | D |
| 四・九 | G♯ | B♭ | C | C♯ | E♭ |
| 六・斗 | C♯ | E♭ | F | F♯ | G♯ |
| 十 | C | D | E | F | G |
表は同じ音名になる絃をまとめています(オクターブは違います)。一の絃を1音上げて E にすると、すべての絃が1音ずつ上がります。和楽器チューナーでは、箏の一の絃を C4〜G4 の8段階から選べ、各絃の目標の音名と周波数が自動で並びます。
平調子の調弦の手順
調弦は、基準になる一(と五)を先に決め、そこからオクターブや同じ音の関係を使って広げていくと、ずれが少なく早く合わせられます。
- 1
柱をおおよその位置に立てる
前回の調弦の位置や、印を付けた位置を目安に、13本の柱を立てます。柱は倒れないよう、絃に対してまっすぐ立てます。
- 2
一と五を合わせる
和楽器チューナーで「箏(琴)」と一の絃の高さ(例:D4)を選び、一の絃をはじいて針が真ん中に来るまで柱を動かします。五も同じ音に合わせます。
- 3
二・三・四・六を合わせる
二(G)・三(A)・四(B♭)・六(E♭)を順に合わせます。四と六は、それぞれ三・五の半音上なので、狭い音程に注意します。
- 4
七〜巾をオクターブで合わせる
七は二の、八は三の、九は四の、十は五の、斗は六の、為は七の、巾は八の1オクターブ上です。下の絃と交互に弾き、うなりのないところで止めます。
- 5
全体を弾いて確かめる
一から巾まで順に弾き下ろし、気になる絃をチューナーで確かめます。すべての絃に ✓ が付けば完了です。
高い絃は音がすぐに減衰するため、チューナーが音を拾いにくいことがあります。爪で少し強めに、はっきりはじくのがコツです。チューナーの弦のボタンを押すと基準の音が鳴るので、耳で合わせたいときは「音を鳴らし続ける」を使うと、柱を動かしながら比べられます。
平調子の音階の特徴
平調子の D・E♭・G・A・B♭ は、半音を含む5つの音でできた音階で、日本の伝統音楽でよく聞かれる「都節(みやこぶし)音階」の形をしています。D と E♭、A と B♭ が半音で隣り合っているのが、平調子独特のしっとりとした、どこか哀愁のある響きのもとです。
- 半音の組み合わせ:一・五(D)と六(E♭)、三・八(A)と四・九(B♭)
- 4度・5度の骨組み:D・G・A の3音(核になる音)の間隔が、響きの土台になる
- 押し手(おしで):柱の左側の絃を左手で押すと音が上がり、平調子にない音(E・C など)も出せる
平調子のほかにも、雲井調子・中空調子などの調子があり、平調子から何本かの柱を動かして作ります。和楽器チューナーが対応しているのは平調子ですが、チューナーの針と音名表示を見ながら、目的の音に柱を動かして合わせることはできます。
調弦が合わない・すぐずれるとき
- 柱が倒れる・ずれる:柱は絃の張力だけで立っているので、強くぶつけると倒れたり動いたりします。弾く前に柱がまっすぐか確かめます
- どこに柱を置いても合わない:絃がゆるんでいる可能性があります。張り直しは専門の店に頼むのが一般的です
- 季節で合う位置が変わる:温度や湿度で絃の張りが変わるため、同じ位置でも音程が変わります。毎回チューナーで確かめます
- 針がふらつく:箏の近くにスマホを置き、ほかの絃が鳴らないよう手で押さえて1本ずつはじきます
三味線や尺八と合奏するときは、全員で基準の高さ(440Hz・442Hz)をそろえておくと、合奏中のずれが少なくなります。三味線の本数との関係は三味線の本数と音名の対応表、曲に合わせた本数の決め方は曲・声に合う本数の調べ方も参考にしてください。
よくある質問
- 箏の平調子は何の音ですか?
- 一の絃を D(レ)にした場合、一 D・二 G・三 A・四 B♭・五 D・六 E♭・七 G・八 A・九 B♭・十 D・斗 E♭・為 G・巾 A です。一と五は同じ高さ、十は五の1オクターブ上になります。
- 十一本目から先の絃は何と呼びますか?
- 十一本目を斗(と)、十二本目を為(い)、十三本目を巾(きん)と呼びます。平調子(一=D)では、斗は E♭、為は G、巾は A です。
- 柱をどちらに動かすと音が高くなりますか?
- 龍角(右手で弾く側の端の駒)に近づけると、振動する部分が短くなって音が高くなります。遠ざけると低くなります。高い絃ほど少しの移動で大きく変わるので、少しずつ動かします。
- 平調子の一の絃は D でなければいけませんか?
- D がよく使われますが、曲や合奏相手、歌の高さによって E などに変えることもあります。一の絃を変えると、全体が同じ幅だけ上下します。和楽器チューナーでは一の絃を C4〜G4 から選べます。
- スマホのチューナーで箏を合わせられますか?
- 合わせられます。和楽器チューナーで箏(琴)と一の絃の高さを選ぶと、13本の目標の音名が並び、はじいた絃のずれを針で表示します。自動で弦を判定するので、どの絃をはじいたかを指定する必要もありません。
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