三味線の本調子・二上り・三下りの違い|各糸の音と調弦のやり方
三味線を習い始めると、最初にぶつかるのが「本調子」「二上り」「三下り」という3つの調子です。どの糸を何の音に合わせるのか、曲の途中で調子が変わったらどこを動かせばいいのか、チューナーでうまく合わないのはなぜか。この記事では、3つの調子の音程の違いを表で整理し、三本・六本での具体的な音、曲の雰囲気の違い、調子替えの手順、耳とチューナーでの調弦のやり方、調弦がすぐ狂うときの対処までをまとめます。
3つの調子の違いは「二の糸と三の糸の位置」だけ
本調子・二上り・三下りは、どれも一の糸の高さ(本数)はそのままで、二の糸と三の糸を一の糸からどれだけ上に合わせるかが違うだけです。基本の本調子から1本の糸を1音(全音=半音2つ)動かすと、二上りか三下りになります。
| 調子 | 一の糸→二の糸 | 一の糸→三の糸 | 本調子からの変え方 |
|---|---|---|---|
| 本調子 | 完全4度(半音5つ) | 1オクターブ(半音12) | 基本の調子 |
| 二上り | 完全5度(半音7つ) | 1オクターブ(半音12) | 二の糸を1音上げる |
| 三下り | 完全4度(半音5つ) | 短7度(半音10) | 三の糸を1音下げる |
名前のとおり、「二上り」は二の糸を上げ、「三下り」は三の糸を下げた調子です。どちらも本調子を基準にした呼び名なので、まず本調子を正確に合わせられるようになると、残りの2つは1本の糸を動かすだけで作れます。
三本・四本・六本での具体的な音
よく使われる本数で、3本の糸の音名と周波数を並べました(基準 A4=440Hz、一の糸を A2〜G♯3 の範囲としたときの値)。
| 本数・調子 | 一の糸 | 二の糸 | 三の糸 |
|---|---|---|---|
| 三本・本調子 | B(シ)123.5Hz | E(ミ)164.8Hz | B(シ)246.9Hz |
| 三本・二上り | B(シ)123.5Hz | F♯(ファ♯)185.0Hz | B(シ)246.9Hz |
| 三本・三下り | B(シ)123.5Hz | E(ミ)164.8Hz | A(ラ)220.0Hz |
| 四本・本調子 | C(ド)130.8Hz | F(ファ)174.6Hz | C(ド)261.6Hz |
| 四本・二上り | C(ド)130.8Hz | G(ソ)196.0Hz | C(ド)261.6Hz |
| 四本・三下り | C(ド)130.8Hz | F(ファ)174.6Hz | B♭(シ♭)233.1Hz |
| 六本・本調子 | D(レ)146.8Hz | G(ソ)196.0Hz | D(レ)293.7Hz |
| 六本・二上り | D(レ)146.8Hz | A(ラ)220.0Hz | D(レ)293.7Hz |
| 六本・三下り | D(レ)146.8Hz | G(ソ)196.0Hz | C(ド)261.6Hz |
一本〜十二本すべての音名は三味線の本数と音名の対応表にまとめています。表の周波数はあくまで平均律の目安で、合奏では相手の楽器や基準の高さ(440Hz・442Hz)に合わせます。
調子による曲の雰囲気と使い分け
同じ本数でも、調子が変わると開放弦の響きが変わり、曲の印象も変わります。一般的には次のような傾向があるといわれます。
- 本調子:落ち着いた、どっしりした響き。基本の調子として多くのジャンルで使われる
- 二上り:二の糸が高くなり、明るく華やかな響き。にぎやかな民謡や、浮き立つような場面に多い
- 三下り:三の糸が下がり、しっとりした、くだけた響き。端唄・小唄や情緒的な曲に多い
ただし、どの曲がどの調子で弾かれるかは、ジャンルや流派、演奏する人によって決まっています。譜面(文化譜など)の冒頭に調子と本数が書かれていることが多いので、まずはそこを確認しましょう。
曲の途中で調子を替える(調子替え)
長唄などでは、1曲の途中で本調子から二上りへ、二上りから三下りへと調子を替えることがあります。どれも動かすのは1本の糸だけなので、何を動かすかを覚えておけば、演奏の合間にすばやく替えられます。
| 替え方 | 動かす糸 | 動かす量 |
|---|---|---|
| 本調子 → 二上り | 二の糸 | 1音上げる(締める) |
| 二上り → 本調子 | 二の糸 | 1音下げる(ゆるめる) |
| 本調子 → 三下り | 三の糸 | 1音下げる(ゆるめる) |
| 三下り → 本調子 | 三の糸 | 1音上げる(締める) |
| 二上り → 三下り | 二の糸と三の糸 | 二の糸を1音下げ、三の糸を1音下げる |
調弦のやり方(チューナー・耳)
調弦は、一の糸 → 三の糸 → 二の糸 の順に合わせるのが基本です。一の糸と三の糸は(三下り以外では)ちょうど1オクターブなので耳でも合わせやすく、最後に間の二の糸を決めると全体がずれにくくなります。
- 1
一の糸を本数の音に合わせる
調子笛や基準の音を鳴らし、一の糸をその高さに合わせます。和楽器チューナーなら、本数を選んで一の糸のボタンを押すと基準の音が鳴り、マイクで聞かせると針でずれがわかります。
- 2
三の糸を1オクターブ上に合わせる
一の糸と三の糸を交互にはじき、ワンワンという「うなり」がなくなるところで止めます。三下りなら、ここから1音下げます。
- 3
二の糸を合わせる
本調子なら一の糸の完全4度上、二上りなら完全5度上です。耳で合わせるときは、一の糸の勘所を押さえて二の糸の開放と同じ音になる位置で確かめると確実です。
- 4
もう一度一の糸から確かめる
ほかの糸を締めると棹や皮にかかる力が変わり、最初の糸が少しずれることがあります。一周確かめて、ずれていたら小さく直します。
糸巻き(ねじ)は、回すだけでなく、軽く押し込みながら回すと止まりやすくなります。高いときはゆるめて下から上げていくと、糸巻きが戻りにくく、狙った高さで止めやすくなります。
調弦がすぐ狂う・合わないときのチェック
- 張ったばかりの糸:絹糸もナイロン(テトロン)糸も、張ってしばらくは伸びて下がります。何度か合わせ直すと落ち着きます
- 糸巻きが戻る:押し込みが弱いと少しずつ戻ります。糸巻きと穴の当たりが悪いときは、楽器店で調整してもらうのが安全です
- 温度や湿度の変化:皮や棹が影響を受けるので、弾く部屋に楽器をなじませてから合わせます
- 駒の位置:駒がずれていると音程や響きが変わります。いつもの位置に置けているか確かめます
- まわりの音:チューナーの針がふらつくときは、静かな場所で、楽器をマイクに近づけてはじきます
スマホのマイクがうまく音を拾わないときは、マイクテストのやり方でマイク自体が動いているかを先に確かめると原因を切り分けやすくなります。
よくある質問
- 本調子・二上り・三下りの違いを簡単に教えてください。
- 本調子は二の糸が一の糸の4度上、三の糸が1オクターブ上の基本の調子です。二上りは本調子から二の糸を1音上げ、三下りは本調子から三の糸を1音下げます。一の糸の高さ(本数)はどれも同じです。
- 三本の二上りは何の音ですか?
- 一の糸 B(シ)、二の糸 F♯(ファ♯)、三の糸 B(シ)です。本調子(シ・ミ・シ)から二の糸を1音上げた形になります。
- 六本の三下りは何の音ですか?
- 一の糸 D(レ)、二の糸 G(ソ)、三の糸 C(ド)です。本調子(レ・ソ・レ)から三の糸を1音下げた形になります。
- 調弦はどの糸から合わせますか?
- 一の糸を本数の音に合わせ、次に三の糸を1オクターブ上(三下りならそこから1音下)、最後に二の糸を合わせるのが基本です。最後にもう一度一の糸から確かめると、狂いに気づけます。
- 二上りから三下りに替えるにはどうしますか?
- 二の糸を1音下げて本調子の位置に戻し、三の糸を1音下げます。たとえば三本なら、シ・ファ♯・シ から シ・ミ・ラ にします。
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