三味線の本数と音名の対応表|一本〜十二本の音・周波数の早見表
「三本でお願いします」「今日は六本で」。三味線や民謡の世界では、曲の高さを「本数」で伝えます。けれど、三本が何の音なのか、六本はドレミでいうとどこなのかを、すぐに答えられる人は多くありません。この記事では、一本〜十二本の音名(英語・ドレミ・いろは)と周波数の早見表、本調子・二上り・三下りにしたときの3本の糸の音、本数が半音ずつ上がるしくみ、流派による呼び方のずれ、チューナーで本数を確かめる方法までをまとめます。
三味線の「本数」とは
本数(ほんすう)は、三味線のいちばん太い糸である「一の糸」を、どの高さに合わせるかを表す呼び方です。もともとは調子笛(ちょうしぶえ)の笛の番号に由来し、一本・二本・三本……と数字が1つ増えるごとに、音が半音ずつ高くなります。
洋楽でいえば「キー(調)」に近い考え方です。ただし本数が直接表しているのは曲のキーではなく、あくまで一の糸の高さです。二の糸と三の糸は、本調子・二上り・三下りといった「調子」によって一の糸からの音程が決まるので、本数と調子の2つがそろうと、3本の糸の音がすべて決まります。
- 本数:一の糸の高さ。一本=A(ラ)から半音ずつ上がり、十二本=G♯(ソ♯)
- 調子:一の糸に対して二の糸・三の糸をどれだけ上に合わせるか(本調子・二上り・三下り)
- 本数を1つ上げる=曲全体を半音上げる。洋楽の移調とまったく同じ関係
一本〜十二本の音名と周波数の早見表
一の糸の音を、英語の音名・ドレミ・日本式のいろは(ハニホヘトイロ)で並べました。周波数は和楽器チューナーと同じく、一本の一の糸を A2(110Hz)とし、基準の A4 を 440Hz と 442Hz にしたときの平均律の値です。
| 本数 | 音名 | ドレミ | いろは | 一の糸(440Hz) | 一の糸(442Hz) |
|---|---|---|---|---|---|
| 一本 | A | ラ | イ | 110.0Hz | 110.5Hz |
| 二本 | B♭(A♯) | シ♭(ラ♯) | 変ロ | 116.5Hz | 117.1Hz |
| 三本 | B | シ | ロ | 123.5Hz | 124.0Hz |
| 四本 | C | ド | ハ | 130.8Hz | 131.4Hz |
| 五本 | C♯(D♭) | ド♯(レ♭) | 嬰ハ | 138.6Hz | 139.2Hz |
| 六本 | D | レ | ニ | 146.8Hz | 147.5Hz |
| 七本 | E♭(D♯) | ミ♭(レ♯) | 変ホ | 155.6Hz | 156.3Hz |
| 八本 | E | ミ | ホ | 164.8Hz | 165.6Hz |
| 九本 | F | ファ | ヘ | 174.6Hz | 175.4Hz |
| 十本 | F♯(G♭) | ファ♯(ソ♭) | 嬰ヘ | 185.0Hz | 185.8Hz |
| 十一本 | G | ソ | ト | 196.0Hz | 196.9Hz |
| 十二本 | G♯(A♭) | ソ♯(ラ♭) | 嬰ト | 207.7Hz | 208.6Hz |
覚えるときは「一本がラ、四本がド」の2つを押さえると楽です。四本=ド、六本=レ、八本=ミ、九本=ファ、十一本=ソと、ドレミの白鍵にあたる本数が飛び飛びに並びます。間の二本・五本・七本・十本・十二本はピアノの黒鍵にあたる音です。
本数ごとの本調子・二上り・三下りの3本の糸
本数が決まったら、調子に合わせて二の糸と三の糸を合わせます。本調子は二の糸が一の糸の完全4度上、三の糸が1オクターブ上。二上りは二の糸を1音上げて完全5度に、三下りは三の糸を1音下げます。全本数の3本の糸の音名は次のとおりです(左から一の糸・二の糸・三の糸)。
| 本数 | 本調子 | 二上り | 三下り |
|---|---|---|---|
| 一本 | A・D・A | A・E・A | A・D・G |
| 二本 | B♭・E♭・B♭ | B♭・F・B♭ | B♭・E♭・G♯ |
| 三本 | B・E・B | B・F♯・B | B・E・A |
| 四本 | C・F・C | C・G・C | C・F・B♭ |
| 五本 | C♯・F♯・C♯ | C♯・G♯・C♯ | C♯・F♯・B |
| 六本 | D・G・D | D・A・D | D・G・C |
| 七本 | E♭・G♯・E♭ | E♭・B♭・E♭ | E♭・G♯・C♯ |
| 八本 | E・A・E | E・B・E | E・A・D |
| 九本 | F・B♭・F | F・C・F | F・B♭・E♭ |
| 十本 | F♯・B・F♯ | F♯・C♯・F♯ | F♯・B・E |
| 十一本 | G・C・G | G・D・G | G・C・F |
| 十二本 | G♯・C♯・G♯ | G♯・E♭・G♯ | G♯・C♯・F♯ |
♯と♭の書き方は、和楽器チューナーの表示(B♭・E♭・G♯・C♯・F♯)に合わせています。たとえば二本の三下りの三の糸「G♯」は A♭ と書いても同じ高さです。楽譜や先生の書き方と違っても、ピアノで同じ鍵盤なら同じ音と考えて問題ありません。
調子ごとの違いや、曲の途中で調子を替えるときの手順は本調子・二上り・三下りの違いと調弦のやり方で詳しく解説しています。
一の糸は実際にどの高さ?オクターブの考え方
本数は音名(ドレミ)だけを決めるもので、何オクターブ目かまでは決めていません。実際の一の糸の高さは楽器の大きさや糸の太さでおおよそ決まり、早見表では一本=A2(110Hz)から十二本=G♯3(約208Hz)の範囲で示しています。ピアノの真ん中のド(C4)より1オクターブ下のあたりです。
- 一の糸:一本 A2 〜 十二本 G♯3(約110〜208Hz)
- 二の糸:本調子なら一の糸の完全4度上(四本なら F3・約175Hz)
- 三の糸:本調子・二上りなら一の糸のちょうど1オクターブ上(四本なら C4・約262Hz)
三味線は一の糸に「さわり」という仕掛けがあり、ビーンという独特の響きとともに倍音が強く鳴ります。そのため一般的なチューナーでは、基本の音より1オクターブ上の音を拾ってしまい、「A2 のはずが A3 と表示される」ということがよく起こります。音名が合っていれば調弦は合っているので、表示のオクターブは気にしなくて大丈夫です。和楽器チューナーは音名(オクターブを除いた高さ)で判定し、オクターブ違いは補足として表示します。
流派や地域で呼び方がずれることがある
この記事の早見表は、一本=A を基準に半音ずつ上がる、民謡や長唄などで広く使われている対応です。ただし、使っている調子笛や流派・地域の習慣によっては、1本ずれた呼び方をすることがあります。先生や会で指定された本数が、自分の想定と半音違うように聞こえたら、一度確かめてみてください。
- 調子笛には製品によって一本〜十二本のものと、一本の1オクターブ上の音(十三本と呼ぶもの)まで入ったものがある
- 調子笛の基準は 440Hz のものと 442Hz のものがあり、同じ本数でも約 8 セント(半音の約 8%)高さが違う
- 「本」ではなく音名(C・D)やキーで伝える教室もある。その場合は早見表で本数に直す
チューナーで本数を確かめる・調べる方法
- 1
楽器と調子・本数を選ぶ
和楽器チューナーで「三味線」を選び、本調子・二上り・三下りのどれかと、一本〜十二本を選びます。合奏で 442Hz を使うときは、基準の A4 も変えておきます。
- 2
3本の糸の目標を確かめる
各糸の目標の音名と周波数が並びます。弦のボタンを押すと、調子笛の代わりに基準の音が鳴ります。
- 3
マイクで合わせる
「マイクで合わせる」を押して糸をはじくと、高い・低いを針とセントで表示します。±5 セント以内が 0.7 秒続くと、その糸に ✓ が付きます。
- 4
聞こえた音の本数を見る
歌や音源、ほかの楽器の音を聞かせると、その音が何本にあたるかが早見表の色で示されます。先生の楽器の本数を確かめたいときにも使えます。
曲や声に合う本数の決め方は曲・声に合う本数の調べ方で、三線の本数と調子は三線のちんだみ(調弦)のやり方で、箏の調弦は箏(琴)の平調子の調弦で解説しています。
よくある質問
- 三味線の三本は何の音ですか?
- 三本は B(シ、いろはではロ)です。一の糸を B に合わせ、本調子なら二の糸を E、三の糸を1オクターブ上の B にします(シ・ミ・シ)。周波数は 440Hz 基準で一の糸が約 123.5Hz です。
- 六本はドレミでいうと何ですか?
- 六本は D(レ)です。本調子は レ・ソ・レ、二上りは レ・ラ・レ、三下りは レ・ソ・ド になります。
- 本数が1つ上がると、どれくらい高くなりますか?
- 半音(100 セント)高くなります。四本(C)から六本(D)なら全音、四本から十一本(G)なら完全5度上がります。洋楽の移調で、キーを半音ずつ上げるのと同じ関係です。
- チューナーで1オクターブ上と出るのは合っていますか?
- 音名が合っていれば合っています。三味線はさわりで倍音が強く鳴るため、チューナーが1オクターブ上の音を拾うことがよくあります。和楽器チューナーはオクターブを除いた音名のずれで針を動かすので、そのまま合わせて大丈夫です。
- 十二本より高い本数はありますか?
- 十二本(G♯)の次は一本(A)の1オクターブ上になるため、一般的な早見表は十二本までです。調子笛によっては一本の1オクターブ上を十三本として入れているものもあります。
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